『愛のアランフェス』槇村さとる

愛のアランフェス 1 (集英社文庫(コミック版))

愛のアランフェス 1 (集英社文庫(コミック版))

大好き。古い少女漫画はある程度の量を読みつくしたという自負があったので、まさかこの年になって肌に合う作家が出会えるとは思っていませんでした。作品はちらほらあるだろうけれど、まさか「この人の作品は全部読みたい」というような人にはなかなか出くわせないものです。とっても嬉しい。
お話はそれこそ上の『アラベスク』を踏襲するような王道スタイルで、特に凝ったものではありません。ただ、丁寧な解説と魅力的な人物描写(特に脇役)で実に読ませるんだ。槇村さんが描き続けているのは結局一つのことで、つまりは「何のために自分は踊る?」ということだと僕は思うのだけれど、それはバレエ・フィギュアと形を変えてもやっぱり同じ回答に辿り着くことだろう。それでも、主人公のバックグランドやパーソナリティ、そして演技ジャンルが異なれば悩める道筋は当然違うわけで、答えがわかっている僕にもその展開には胸を打たれてしまう。ビルデュングス・ロマンだね。