『ダークナイト』クリストファー・ノーラン

ダークナイト

ダークナイト

"dark night"でなく"dark knight"です。「黒い夜かぁ」と思っていた私はただのあほで、「闇の騎士」が正解ね。念のため。
で、感想は、これは凄かった! 感心とか感動とか陶酔とかそんなレベルじゃあ全くない。とにかく圧倒させられた。凄いよ! 硬派で骨太でかっこいい。批評家も黙らせることができる作品だし、何より広く映画ファンに愛される水準にあると思う。こういう映画に年に一度は出会いたいものだよ。
お話は犯罪都市ゴッサムシティにやる気溢れる新任検事がやってきて街の浄化を進める。「闇の立場」で正義を行ってきたバットマンは彼を信じ、彼を「真の」ヒーローとして地位を退こうとする。そこに凶器の犯罪者ジョーカーが現れて…、というもの。「光と影」に代表される二項対立、まぁ言ってしまえば割に安直なテーマです、それがスリルあふれる映画の展開で全くしょぼくなくストレートに伝わるんだ。印象に残るのは色々だけれど、皆がそうであるように私もヒース・レジャー演ずるジョーカーの鬼気迫る名演に気を吐かされた。ヘラヘラ笑いで、ヨタヨタ歩いて、それでいて腕っ節は実は弱いというキャラ設定が彼の狂喜の世界を間近に感じさせる。彼の気迫はごく単純に怖かったし、プロットの技巧もあってか、「あぁこりゃバットマン負けるな。マスク脱がされちまうよ」と後半までは本気で思わされた。
ハリウッド映画なんだからそんなの当たり前? いえ、私はそうは思いません。仰る通り、本作は娯楽映画の最高峰たるハリウッド映画です。その意味では中途で主役がヒヨって、観客をビビらせる。でも最後に立ち上がって、で、悪者をすっとばして観客はほくほくとなるのがお決まり。でも、それが分かっていながらもお話が結末がどうなるか私は本気でビビったのだよ。つまりそれくらい彼の演技は凄かったってこと。
劇団時代に「映画は監督のもの、芝居は役者のもの」というような話を聞かされたことがあったけれど、こういう映画に出会ってしまうと、やっぱり例外はあるのだなと思うのだ。たった一人で監督よりもはるかに作品世界をコントロールしちゃうような役者がたまにいるんです。かっこよかったなぁ。
2時間半という中々ありえない長さの作品ながら、中途で集中力を切らされることは皆無でした。また見返したいもんだね。