『パプリカ』今敏

パプリカ [DVD]

パプリカ [DVD]

名作。『東京ゴッドファーザーズ』『千年女優』『パーフェクト・ブルー』全ての魅力がそれぞれ合わさったかのよう。音楽・美術・プロット各自が過剰に自己主張することなく、流麗に溶け合う姿は見事。いや、良い意味で音楽は印象に残ったかもしれない。平沢進の美学と今敏の発想がきれいにクロスしていて、良いBGMだった。印象的。
お話については基本的には「夢と現」ということ。ただ、それを離れてというか、それ自体をかなり多様な面から分析できるのが私としては面白かった。例えば嫉妬・欲望という負の感情から除く人間模様とも読み取れるし、あるいは生活に侵食する広告というフィクション、つまりは情報の氾濫からの深読みも可能だろう。正解を明確に示さない演出からも感じられるように、プロットメイクの懐の深さを感じさせられたものである。
ごく単純な好き嫌いならば私は圧倒的に『千年女優』に惹かれる。気分によって、例えば気が滅入っているときなどは『東京ゴッドファーザーズ』を観るかもしれない。(『パーフェクト・ブルー』はいまいちであったのだ)。ただ、作品としての一体感、つまるところの完成度の高さという意味ならばこの『パプリカ』が突出しているのではないかというのが私の印象。かなりのパブリシティーを得て、また批評家たちからも好意的に受け止められたというのも理解できる話ではある。
次回作を楽しみにしたい。