『ブランドはなぜ墜ちたか』産経新聞取材班

・事件前、消費者調査で目隠しをして雪印・明治の牛乳を比べてもらった。すると多くが明治を選択。しかくパッケージを見せると雪印を選んだ。ブランドイメージは強かった。
参天製薬ベンジン入り目薬脅迫事件。それによる商品回収で参天製薬は経常利益で13億円の損失を出した。しかしより大事なブランドイメージは守られた。
雪印の原点は「北海道の酪農家の自立と救済」だった。
・かつても食中毒事件は起きた。しかし当時の技術部トップは「品質と信頼」に対する確固たる信念があったので対応策に迷いはなかった。
・「D-0」という言葉が事件の原因の一つだ。day zeroのこと。製造された日に店頭に並ばせろというスーパーの圧力。
雪印はスーパーを重視し、専属販売店を軽視した。
・牛乳とは異なる加工乳・乳飲料脱脂粉乳のようなもの。「毎日骨太」はこれ。
・そごうの複雑な経営術。本体が100%出資した千葉そごうが軌道にのると千葉そごうが柏そごうを出資して設立。つぎは千葉・柏の共同出資で札幌を作るという具合。
・新店舗設立の際の資金調達は困難が伴う。そこを水島は「地域一番店」を標語にした地域密着戦略によって地銀の融資を受けやすくした。
三菱自動車三菱重工の自動車部門から1940年に切り離されて設立された。
・三菱の「金曜会」。商事・銀行・重工が世話役になる。自動車はそれらの指導から逃れられなかった。ユーザーの声より「金曜会」の指示を優先してしまったのだ。
・名車パジェロにしがみつく、つまり過去の焼き直しばかりの展開。変化する感覚に乏しい経営がネックだった。
雪印は自社技術・品質管理への過信・怠慢があった。そごうはワンマン体制が暴走したときにそれを止める手段を持たなかった。三菱は巨大企業グループにいた甘えがあった。

それなりに勉強になった。しかしあまりに情感的な内容。「会社人の誇り」のようなものを全面に出しすぎて、細かなエピソードも涙を誘わせようとするものばかり。硬派というのとはちょっと違う不思議な経済ドキュメント。いや、各企業の内情が伺えるのはやはり面白い。私はやはりこういう読み物が好きなのだな。